仕事中の事故!同僚にケガを負わせた場合
顧問先の部長から問い合わせの電話がありました。
仕事で草刈をしていて、用事で呼びに来た同僚に振り向いた瞬間、自動草刈機で足にケガをさせてしまったと言う。
草刈機では、よくある事故です。
「労災で処理するつもりだが、私に損害賠償の責任があるのでしょうか?労災では保険がおりないとも聞いたが。」とのこと。
第三者行為災害ということばがすぐに頭に浮かんだが、即答は控えて、「調べて連絡します。」と答えておいた。
第三者行為災害とは
労働者災害補償保険法
第十二条の四(第三者行為災害) 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
○2 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。
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業務災害や通勤災害が第三者の行為によって発生した場合、被災者は労災保険に対する給付を請求する権利と第三者に対する損害賠償を請求する権利が生じることとなります。
※第三者とは保険者である政府、保険加入者である事業主受給権者である労働者及び遺族という当事者以外の者をいいます。
本来、被災者及び遺族にてん補されるべき損失は、災害の原因となった加害行為等に基づき損害賠償責任を負った第三者が負担すべきものであり、これを保険者である政府が行うことは不合理であると考えられます。
そこで、第三者の行為による災害に関する労災保険の給付と民事損害賠償との支給調整が労災保険法第12条の4で定められています。
労災保険が、第三者行為災害による受給権者に保険給付を行った場合に、、政府は、被災者等が当該第三者に対して有する損害賠償請求権を労災保険の給付の価額の限度で取得するものとしています。
(政府が被災者の代りに取得した損害賠償請求権を行使することを「求償」といいます。)
また、被災者及び遺族などの保険給付を受けることができる者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができるとしています。
(このことを「控除」といいます。)
しかし、第三者行為による災害であっても、求償をしない場合があります。
(求償をしない場合)
ア)同じ事業主に使用されている同僚労働者相互の間に災害が生じた場合
イ)同じ事業主だが事業場を異にする労働者相互の間に災害が生じた場合
ウ)同一作業場内で同時に作業している事業主の相違する労働者相互の間に災害が生じた場合
通達により、求償を差し控えるとされています。
過失を問わず業務上の災害を救うのが労働者災害補償保険法の主旨、業務には少なからず事故発生の危険性を含むものと考えられ、加害者といえども、ある意味では被害者といえます。
労働者相互間の災害の加害者に対して、求償を差し控えるのはこの主旨によるものではないでしょうか。
問い合わせがあった顧問先の部長に、このことを告げるとほっとした様子でした。
幸い、ケガも思ったより軽く済み、1週間位で退院できるとのこと。
普段は草刈機など使うことがない業種なので、業務開始時の安全点検や安全注意などがされていなかったようです。
再発防止策に草刈機の業務使用マニュアルを提案しておきました。