2013.08.29 Thursday

TVドラマ「名もなき毒」とセクハラ対応

TVドラマ「名もなき毒」の第2部が始まった。
ドラマの中に原田いずみという女性が登場する。
彼女は編集アシスタントの募集に80人の中から一人採用された。
しかし、仕事の注意をするとすぐに外に飛び出し仕事にならない。
たびたびヒステリーを起こすのでいずみを解雇することになった。
ところが、いずみから会長に手紙が届いた。
「不当な扱い、サービス残業、セクハラ、バイトに対する差別」これらを弁護士に相談し、訴えると言う内容だった。ありもしない話だ。
このTVドラマほどはひどく無いにせよ、似たような話は結構、見聞きする。
先日も、顧問先からセクハラに関する相談を受けた。
その顧問先では、社内調査で確かにセクハラ行為があったことが確認された。
この場合に、会社の責任はどこまであるのだろうか。
会社としては、どう対処すべきなのか。
まず、セクハラとは何なのか?
「男女雇用機会均等法」第11条では、次のように規定している。
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること

セクハラは本来セクハラ行為を行った者(加害者)とセクハラ行為を受けた者(被害者)との問題であり、会社にどういう責任があるのか?
まず、加害者と被害者の関係であるが、

  • セクハラによる名誉感情や人格権を侵害
  • セクハラによる職場で働く利益の侵害
がある。

民法第715条では、次のように規定している。

(不法行為による損害賠償)故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
加害者は被害者に対して損害賠償の責任を負う。

次に、会社にはどんな責任があるのだろうか?

(民法第715条)(使用者責任)ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであった時は、この限りでない。
  • 使用者は被用者との関係において被用者が労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう職場環境等につき配慮すべき注意義務を負う。
  • 労務遂行に関連して被用者の人格的尊厳侵しその労務提供に重大な支障をきたす事由が発生することを防ぎ、職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務がある。
(労働者の安全への配慮)(労働契約法第5条)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
(債務不履行による損害賠償)(民法415条)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
2 不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のために適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。

会社や職場で講じるべきセクハラ対策

会社でセクハラが発生した場合には、上記のように会社にも責任があり、損害賠償の責任が発生する。しかし、上記使用者責任にもあるように、”使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであった時”その責任を免れる。そのために会社が講ずべき措置とは?

男女雇用機会均等法では、次のように規定している。

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必容易な措置を講じなければならない。
【事業主が雇用管理上講ずべき措置】
1 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(1) 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2) セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
2 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3) 相談窓口をあらかじめ定めること。
(4) 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
また、広く相談に対応すること。
3 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
(5) 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(6) 事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
(7) 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
4 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
(8) 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
(9) 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

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