2012.09.21 Friday

労働契約法改正の注意ポイント!その1

「労働契約法の一部を改正する法律」が平成24年8月10日に公布されました。
今回の改正は
1.無期労働契約への転換
2.「雇止め法理」法定化
3.不合理な労働条件の禁止
の3点です。

ほとんどの事業所で契約期間を定めて雇用する従業員がいると思われます。
改正条文自体は今までの判例を法律で定めたことで、目新しいことではありませんが、この改正を解釈する通達
(基発0810第2号)「労働契約法の施行について」を詳細に読むと、労務管理上注意すべき点が多々見受けられます。

以下、私なりの見解を交えながら、説明いたします。

(あくまでも、私なりの見解が入っていますので、疑義がある場合は最寄りの労働局または労働基準監督署へお問い合わせください。)


↓↓↓ブログランキングへご協力ください。

にほんブログ村 士業ブログ 社会保険労務士(社労士)へ


1.無期労働契約への転換(第18条)


有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、有期契約労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約(無期労働契約)へ転換されます。

第18条 同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。


5年を超えて反復更新された場合とは?


【契約期間が1年の場合の例】
5年を超える図1-1
5年を超える有期労働契約をした場合に、その労働契約の初日から契約終了日までの間に無期労働契約への転換の申込みができる。
5年を超える図1-2
通算5年を超えて契約更新をした労働者が、その契約期間中に無期転換の申込みをしなかった場合、次の更新以降でも無期転換の申込みができる。
(注)6ヶ月以上期間が空いた場合は通算されない(後述)
5年を超える図1-3
例えば、契約期間が3年の場合には、2回目の有期労働契約の締結が5年を超える有期労働契約にあたるため、その初日から契約終了日までの間に転換の申込みができる。


同一の使用者とは?


労働契約の相手であり、法人であれば法人、個人事業主であればその個人事業主。
ただし、就業実態が使用者が、就業実態が変わらないにもかかわらず、無期転換申込権の発生を免れるために、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、法を潜脱するものとして、通算契約期間の計算上「同一の使用者」との労働契約が継続していると解される。
なお、派遣労働者の場合は、労働契約の締結の主体である派遣元事業
主との有期労働契約について法第18条第1項の通算契約期間が計算
される。


使用者の承認が必要か?


労働者から使用者へ申込みをすると、使用者は申込みを承諾したものとみなされ、申込み時点で無期労働契約が成立します。
無期に転換されるのは、申込み時の有期労働契約が終了する日の翌日からです。


雇止めをする場合の注意点!


5年を超える図1-4
無期労働契約への申込み時点で無期労働契約は成立します。
従って、現に締結している有期労働契約はその契約期間が満了する日に終了しますが、無期労働契約は成立しているため、雇止めをする場合はこの契約を解約する必要があります。
この場合は解雇にあたり、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用にあたり無効となります。
つまり、通常の解雇と同じく個々に判断されます。
ただし、一般的には、勤務地や職務が限定されている等労働条件や雇用管理がいわゆる正社員と大きく異なるような労働者については、正社員と当然には同列に扱われることにならないと解されます。
また、解雇となる場合に、労働基準法第20条の解雇予告等の規定が適用されるのは言うまでもありません。


無期労働契約へ転換後の待遇


無期労働契約へ転換した労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件となります。
有期労働契約更新時に、所定労働日数や始業終業時刻等の労働条件について定期的に見直しが行われていた場合には、無期労働契約への転換後もこのような労働条件の見直しを行う旨の定めをすることは差し支えないと解されます。

無期労働契約への転換にあたり、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後の労働条件を前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める上で、望ましいものではありません。

また、個別の労働契約で就業規則で有効に定められた労働条件を下回る場合は、就業規則の労働条件が適用されます。


「通算5年」の意味、クーリングとは?


5年を超える図1-5
同一の有期契約労働者と使用者との間で、間をおいて有期労働契約が再度締結された場合、その間の長さが次のいずれかに該当する場合には、空白期間に該当し、その空白期間前に終了している全ての有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入される。
このことを”クーリング”と言います。
(1)6ヶ月以上の空白期間
(2)直前までの有期労働契約の契約期間が1年未満の場合はその期間に2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間以上


実際に、無期労働契約へ転換され始めるのはいつからか?


施行日がまだ定められてませんが、施行日以降に契約した有期労働契約が5年を超えて更新された場合からとなります。

<< 「スカイマーク・サービスコンセプト」に考えさせられる!? | main | TVドラマ「名もなき毒」とセクハラ対応 >>