2009.10.29 Thursday

パートタイマーへの労働条件の明示−その2

労働基準法15条での労働者への労働条件の明示はご存じの方も多いと思いますが、パートタイム労働法(正式名称:「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)にもパートタイム労働者への労働条件を明示する義務がある項目があります。

それは、次の3項目です。
1.昇給の有無
2.退職手当の有無
3.賞与の有無

パートタイム労働法の条文の中では特に重要な条文であり、違反の場合には1契約につき、10万円以下の過料に処せられます。
つまり、パートタイム労働者10人に対し、この3項目の労働条件を明示していなかった場合には10件×10万円=100万円の過料が発生します。
100人だと、1000万円です。

もっとも、違反だからといって直ちに過料が発生する訳ではありません。
まずは助言、次に指導、それでも従わない場合に勧告、それでも是正されない場合が過料という順序となります。

↓↓↓ブログランキングへご協力ください。


にほんブログ村士業ブログ 社会保険労務士(社労士)へ
雇い入れの際のパートタイム労働者に対する労働条件の明示の状況をみると、口頭によるケースもあり、また、その労働条件が通常の労働者とは別に個々の事情に応じて様々に設定されることが多いため、雇い入れ後に疑いが生じ、トラブルが発生することも少なくありません。

パートタイマーへの労働条件の明示項目と明示方法


パートタイム労働者の雇い入れ時においては、労働基準法およびパートタイム労働法で定められた以下の事項について、文書などによりパートタイム労働者に明示する義務があります。

1.昇給の有無
2.退職手当の有無
3.賞与の有無

文書の交付その他の方法では、パートタイム労働者が希望した場合は電子メールやFAXでも可能です。
電子メールの場合には出力することにより書面が作成できることが条件です。

労働条件の表記方法とその解釈


昇給や賞与の支給を事業所の業績やパート労働者の勤務成績などによって行うケースで業績などによっては行わない可能性がある場合や、退職手当を勤続年数に基づき支給するケースで、所定の年数に達していない場合は支給されない可能性がある場合は、制度は「有り」とした上で、「業績により不支給の場合あり」や「勤続3年未満は不支給」など支給されない可能性があることを明記するようにします。

「昇給」とは、契約期間内での賃金の増額をいいます。
期間契約の更新時に賃金を改定する場合は昇給とはいいません。「昇給:無し(更新時に賃金改定あり)」と表記します。
「昇給」を明示するものとして「賃金改定」「時給の変更」という表示をしている場合、一般的に、改定や変更の結果、降給も含まれると考えられ、必ずしも契約期間内での賃金の増額を明示したものとはいえません。
そのため、「賃金改定:有」「時給の変更:有」のような場合は、法の要求を満たしているとはいえず、法違反となります。
なお、「賃金改定(引き上げ) 」 「時給の変更(引き上げ)」等の表示で、改定又は変更が昇給についての明示であることが明らかな場合は、法の要求を満たします。
また、「賃金改定:無」「時給の変更:無」の場合は、当該契約期間内において賃金の増額がないことが明らかですので、法違反とはなりません。

「賞与」については、労働基準法の解釈例規(昭和22年9月13日付け発基第 17号)で「賞与とは定期又は臨時に、原則として労働者の成績に応じて支給されるものであつて、その支給額が予め確定されていないものをいう」と定義されており、パート法第6条においても、この定義に該当するものを「賞与」と解されます。
したがって、この定義のものであれば、「慰労金」「一時金」等「賞与」以外の名称を使用していても、「賞与」 であるとされます。
また、定期賃金とは別に例えば「12月に10万円支給」と、予め支給額を確定し支給が予定されているものは、「賞与」ではなく、臨時に支払われる賃金に該当するもので、このような賃金を支払うこととしている場合、「賞与:無」と明示しつつ、その旨が明示されることが望ましいとされています。

「退職手当」 について
労働基準法で、事業所において退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項を就業規則で定めることが規定されています。
これを踏まえ、就業規則又はそれに準じるもので定められている手当で、退職時に支払うものであれば、「退職慰労金」「一時金」等という名称の表示あっても法の要求を満たしていると解されます。

<< パートタイマーへの労働条件の明示−その1 | main | 医師の宿直勤務の取扱 >>