パートタイム労働法改正による対応
パートタイム労働法が平成27年4月1日から改正施行されます。
法改正の詳細についてはホームページに記載していますが、今回の法改正で企業として対応すべき点について、まとめてみました。今回の改正により、違反事業所の公表や過料の措置なども加わっています。また、従業員とのトラブルへの未然防止のためにも、対応を行いましょう。
今回の法改正を踏まえた義務項目
1.雇入れの際の労働条件の明示
労働基準法でも、パートタイム労働者を含むすべての従業員に対し、労働条件を明示することが義務付けられています。その中で「契約期間」「有期労働契約を更新する場合の基準」などの特定の項目については、文書で明示することが義務付けられています。(違反の場合は30万円以下の罰金)
パートタイム労働法では、労働基準法の項目に加え「昇給の有無」「賞与の有無」「退職金の有無」を文書で明示することが義務付けられていました。
今回の法改正では、「相談窓口」が文書での明示事項に追加となりました。
具体的には「労働条件通知書」または「労働契約書」等に「相談窓口」を追加することが必要となります。(違反の場合にはパートタイム労働者一人につき、10万円以下の過料が処せられる場合があります。)文書の交付については、パートタイム労働者が希望した場合には電子メールやFAXによる明示方法をとることもできます。契約期間がある従業員の場合には契約期間の更新は新たな雇入れとみなされますので、更新の都度、文書の交付が必要です。
2.正社員と同じ職務内容で人材活用が同じパートタイム労働者の労働条件は同じにする
パートタイム労働者の職務内容や人材活用の仕組みは社内で定められていますか?
パートタイム労働者だからということで、何となく正社員との待遇に差を設けているのではありませんか?
パートタイム労働法第8条では「通常の労働者と同視すべき短時間労働者については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱をしてはならない」と規定しています。
具体的には、パートタイム労働者の職務について、どのような業務を担当し、どのような責任があるのかを明確にし、職務記述書にまとめることをお勧めします。(このことを職務分析といいます。)
労働局雇用均等室に配置されている「雇用均等コンサルタント」の支援を無料でうけることができます。興味がある方は雇用均等室まで連絡ください。
3.正社員と同じ職務内容のパートタイム労働者に対しては正社員と同様の教育訓練を実施する
正社員と同じ職務の内容であれば、必要な教育も正社員と同じはずです。差を設けている会社は少ないと思われます。このこと以前に2.で説明した「職務の内容が同じ」ということを意識しているかどうかです。
何も考えずにパートタイム労働者の能力や経験に合わせて職務の内容を決めているうちに、結果的に正社員と同じになっている場合がありませんか?
職務分析を行い、正社員と比較することによって、職務の内容が同じかどうかを検討しましょう。
4.福利厚生施設の利用
パートタイム労働者の福利厚生のうち、
- (1)給食施設
- (2)休憩室
- (3)更衣室の利用
5.通常の労働者への転換措置
パートタイム労働法ではパートタイム労働者について正社員への転換措置を次の3つのいずれかにより講じることを義務付けています。- (1)正社員を募集する場合にはパートタイム労働者にも応募の機会を与える。
- (2)正社員のポストを社内公募する場合にはパートタイム労働者にもその応募の機会を与える。
- (3)正社員へ転換できる試験制度を規定する。
- (4)その他正社員への転換を推進する措置を講じる。
措置を講じるということは、その措置の内容があらかじめパートタイム労働者へ周知されていることが必要です。周知の方法では
- ・社内に掲示する
- ・労働条件通知書に記載する
- ・措置の内容を文書で回覧する
6.雇入れ時の説明の実施
パートタイム労働者を雇い入れたときは、上記1.〜5.の内容を説明する義務があります。パートタイム労働者の雇用管理の改善に対してどのような措置を講じているのかを説明する必要があります。
説明の内容としては、
- ・賃金制度はどうなっているのか
- ・教育訓練をどのようにしているのか
- ・福利厚生施設がどのように利用できるのか
- ・正社員への転換措置をどのように講じているのか、
7.パートタイム労働者からの相談窓口の設置
パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制の整備が義務付けられました。相談窓口の周知については、1.の文書での明示事項に付加されています。
パートタイム労働法における義務事項についは、上記の7つですが、その他の努力義務もあります。努力義務とは法が求める内容について、実現できるように努めることであり、努力しても実現できない場合は法違反は問われませんが、そもそも実現できるように努める意思が無い場合には法違反が問われ、是正の対象となります。ご注意ください。
なお、この文章内で「正社員」という”ことば”を使っていますが、パートタイム労働法上は「通常の労働者」となっています。正確に言うと「通常の労働者」と「正社員」は違いますが、ほとんど同義ですので、一般的に分かりやすいように「正社員」としています。ご了承ください。