2008.12.08 Monday

いわゆる「名ばかり管理職」の範囲の適正化についての通達

少し、情報としては古いが厚生労働省から9月9日に「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」という通達が出たので、整理してみた。

原文はお役所ことばで、何となく回りくどく、理解しづらいので、私なりに要約、解釈してみた。

あくまでも、私なりの解釈なので、必ず、原文をこちらの厚生労働省の報道発表資料で、参照していただきたい。

また、私のブログでも管理職と残業代!セブンイレブン店長へ残業代支払いの記事で、今までの解釈を詳しく説明していますので、そちらも参照してください。

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多店舗展開する
小売業、飲食業等の店舗における
管理監督者の範囲の適正化について

平成20年9月9日付.基発第0909001号

いわゆるチェーン店の形態における企業の比較的小規模の店舗においては、店長等の少数の正社員と多数のアルバイト・パート等により運営されることが多い。
このような店舗の店長等については、十分な権限、相応の待遇等が与えられていないにもかかわらず、労働基準法第41条第二号に規定する「監督もしくは管理の地位にある者」として取り扱われなどの不適切な事案もみられる。

店舗の店長等が管理監督者に該当するかどうかについては、昭和22年9月13日付け発基第17号、昭和63年3月14日付け基発第10号に基づき、

  • 労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、
  • 労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、
    現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを

職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとなる。

今般、店舗の店長等の管理監督者性の判断に当たっての特徴的な要素について、店舗における実態を踏まえ、最近の裁判例も参考として、下記のとおり整理した。これらの要素も踏まえて判断することにより、店舗における管理監督者の範囲の適正化を図ってもらいたい。
 なお、下記に整理した内容は、いずれも管理監督者性を否定する要素となるものである。
しかし、これらの否定的要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されるものではないことに注意してもらいたい。

1「職務内容、責任と権限」についての判断要素

店舗に所属する労働者に対する採用、解雇、人事考課及び労働時間の管理は、店舗における労務管理に関する重要な職務であり、これらの「職務内容、責任と権限」については、次のように判断されるものであること。

次の場合は管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(1) 採用
店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)に関する責任と権限が実質的にない場合

(2) 解雇
    店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれていず、実質的にもこれに関与しない場合

(3) 人事考課
    人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等を評価することをいう。以下同じ。)の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれていず、実質的にもこれに関与しない場合

(4) 労働時間の管理
店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合

2  「勤務態様」についての判断要素

    管理監督者は「現実の勤務態様も、労働時間の規制になじまないような立場にある者」であることから、「勤務態様」については、遅刻、早退等に関する取扱い、労働時間に関する裁量及び部下の勤務態様との相違により、次のように判断される。

次の場合は管理監督者性を否定する重要な要素となる。

(1) 遅刻、早退等に関する取扱い
遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合
ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理が行われることから、これらの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはならない。

(2) 労働時間に関する裁量
営業時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合

(3) 部下の勤務態様との相違
管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合

3  「賃金等の待遇」についての判断要素

    管理監督者の判断に当たっては「一般労働者に比し優遇措置が講じられている」などの賃金等の待遇面に留意すべきものであるが、「賃金等の待遇」については、基本給、役職手当等の優遇措置、支払われた賃金の総額及び時間単価により、次のように判断される。

次の場合は管理監督者性を否定する補強要素となる。

(1) 基本給、役職手当等の優遇措置
基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるとき

(2) 支払われた賃金の総額
一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合

次の場合は管理監督者性を否定する重要な要素となる。

(3) 時間単価
実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合
特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる。

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